2010年10月6日水曜日

[PC WATCH]電子書籍2010夏

毎年、お盆シーズンは製品発表や取材もなく、比較的ゆったりと過ごすことができる。筆者も休暇を入れつつ、それまで時間がなくて評価できていなかった3DノートPCを見たが、クロストークが目立ち、映像を楽しむにはまだ時間がかかりそうだ。しかし、画質より臨場感を求めるゲームならば、それなりに楽しめるレベルにはなっていると思う。

 この話は機会があれば連載の中でしたいが、今回は電子書籍に関して、さまざまな数字をまとめてみた。すると、日本で電子書籍ビジネスの常識として知られている話が、実は根拠の薄いものである事がわかってきた。

●北米の書籍市場を知る
 電子書籍に関してさまざまな誤解が、特に日本で広まっている背景には、現在の電子書籍ブームの発端となっている北米の状況が、断片的な情報と誤った解釈で伝わっている側面が少なくないと思う。そこで、まずは北米の書籍市場を知り、その後、電子書籍、日本の状況と話を進めていくことにしたい。

 米国の書籍市場は少し前までバーンズ&ノーブルとボーダーズという、2つの巨大書店チェーンが市場を支配してきた。2008年の数字で恐縮だが、バーンズ&ノーブルは全米726店舗、ボーダーズは515店舗の大型書店を全米に展開。毎年のように出店数を増やしてきた。

 それに伴って売り上げも伸びていたのだが、2006~2008年にかけて転機が訪れた。まず2006年にボーダーズが1億5,100万ドルの赤字に転落し、バーンズ&ノーブルの利益は2006年の1億5,100万ドルをピークに(店舗数、売り上げとも伸びているのに)翌年から下がり始めた。売り上げも2007年がピークで、それ以降は減少を続けている。

 これに対してAmazonの売り上げは伸び続け、2008年にはバーンズ&ノーブルを逆転(比較対象はAmazonの売り上げのうち、米国内の書籍のみで比較)している。何より利益の差は大きく、Amazonは2009年約9億ドルの利益を書店事業で挙げた。

 ゆっくりと寛いだ環境でゆっくりと本を選べる快適な大店舗を数多く展開し、本好きを集め、大量に販売することで成長したバーンズ&ノーブル的手法は、しかしAmazonに通期ベースの売り上げで2008年には抜かれていたわけだ。しかも、4期連続という慢性赤字のボーダーズはもちろん、バーンズ&ノーブルも2009年はプラスマイナス・ゼロあたりで、全米1位の書店チェーンでさえ存亡の危機を迎えている。

 つまり“勝ち組がない”のが、北米の書店業界と言える。その中でAmazonは順調に成長しているのだが、ではAmazonはどんな特殊なビジネスをしているのか? 実は非常にオーソドックスなビジネスをしている。

●Kindle向けは赤字……なんて話はない

Amazonの「Kindle」
 Amazonと言えば、新型登場で活性化が進むだろう「Kindle」が、一番の注目株であることは間違いない。日本では電子ペーパーを採用したブックリーダーの現行機種が存在しないため、ピンと来ないという人も多いとは思う。だが、北米ではあまりiBookの事が話題にならなくなってきたように、iPad、iPhone向けのiBook Store戦略は、今のところまだ火がついていない状況だ。

 そのKindleに関して、まことしやかに囁かれているのが、“Amazonは新刊刊行当初は損をしてでも電子流通させ、電子書籍への移行を強力に進めている”という噂。しかし、いくつかの点でこの話はおかしい。

 そもそも、企業が損をしてでも売るという時というのは、それにより利益がもたらされる事が明らかな場合のみだ。一般的に、損をしてでも売る事はない(長期に渡って開発費を回収するなどの戦略はある)。AmazonがKindle向けに新刊を売ると損をするという話は、米ニューズウィークの記事が発端になっている。

 ただし、その内容を見るとKindleに対して批判的な人物が、彼らは新刊当時、損をしてでも電子版を販売していると発言しているのだが、その根拠は「紙の本と同じ価格で電子版を仕入れているから」だという。米国の場合、書店は本を定価の5割で仕入れる。ところがKindle版はハードカバーの半額以下なので、逆ざやが発生することになる。

 そんなはずはないと思い、電子書籍に関連する各所にさまざまな取材をかけてみたが、わかった事は、Amazonがかつてのバーンズ&ノーブルと同じ手法で書籍販売の利益を最大化しようとしていることだった。

 バーンズ&ノーブルは多数の店舗を持つことで扱い量を増やし、仕入れを安く抑えることに成功した。米国では書籍の価格に自由競争の原理が働くようになっているので、扱い量が増えれば仕入れは安くなるのだ。店舗数を増やすほどに利益率を上げることができ、販売量も増える。

 AmazonはKindle版を販売する事で(その中には持ち歩きはKindle、自宅では紙という人も少なからず存在する)扱い量を最大化でき、それによって仕入れ値を下げることができる。仕入れ値が下がるのは紙の本も同じなので、すると主業務である紙の本の販売でも利益率を高めることが可能だ。

 このように、バーンズ&ノーブル的ビジネスをAmazon的に拡張するための“テコ”こそが、Kindleと言える。繰り返しになるが、世の中、損をしてでも……という商売は、ほとんどない。KindleによってAmazonは、紙の書籍ビジネスの利益も最大化しているという部分が重要なのだ。
●驚くほど下がり続けている日本の書籍市場
 一方、日本の状況はどうか。日本の価格モデルと米国のそれは全然違うので直接は比較できない。日本には必ず定価販売となる再販指定がある。また日本の書籍は委託販売であり、出版社が持つ資産(在庫)なのだ。売れなければ返品できるのは、そもそも書店は軒を貸しているだけだからだ。

 また日本の書籍市場はコンスタントに下がり続けている。2009年の売り上げは8,492億円だったが、これが2014年には6,800億円ぐらいになるという試算もある。書籍市場の縮小はここ数年一定で、悲観的な予想通りになる確率は高いだろう。

 よく「日本の出版社は電子書籍化に抵抗していてけしからん」といった意見をみかけるが、そもそも本を作り、流通させる仕組みが失われては電子書籍もなにもない。そもそも、紙の書籍を販売して成り立っている企業に対して、その主力事業たる書籍販売を(まだ流通量の少ない)電子書籍にしろというのは無理がある。

 また日本の出版社が電子書籍化に反対しているというのも、彼らの気持ちを正確には伝えていない。なぜなら電子書籍化を進めなければ、自分たちのビジネスが今後は立ち行かなくなっていくと十分に認知しているからである。

 日本ではまだ電子書籍ビジネス(あくまで書籍であって、雑誌や写真集、新聞、コミックはその限りではない)がまともにスタートしていないが、2014年までに全市場の10%程度が電子版になると予想すると680億円だ。さらにAmazonの成長予測なども加味すると、2014年の書店書籍売り上げは全体の52%しか残らない。市場縮小と利益率低下のダブルパンチだ。

 書店・店頭での売り上げが2014年に今の半分近くになろうというのに、減った分をインターネット経由の販売だけに頼っていては、みすみす業界の縮小を加速させることになる。巻き返すチャンスがあるとするなら、その切っ掛けがいまのところ電子書籍しかないというのは、誰もが意識していることだ。

 紙の本は再版指定があるのに、電子書籍にはない、といった法整備上の問題もあるので、電子書籍後の新秩序が日本ではどうなるか予測しづらい面もある。しかし、それでも出版社は電子書籍化、電子雑誌化は進めなければならない。雑誌市場でも売り上げ規模の縮小が続いているためである。

 書店は書籍だけでなく雑誌も販売しているが、どの両方が同時に下がるため、市場は5年後までに30%以上も小さくなると言われている。すると、ここで負の連鎖が起きる可能性が出てくる。

 収益性が悪化すれば、回復見込みのない店舗は次々に閉店せざるを得ない。例えば2009年に新規出店された書店は286あったが閉店ははるかに多く951店舗。つまり665店舗が純減数だ。

 すると閉店した店舗の売り場から出版社に、大量の本が返品されてくる(前述したように委託販売の形式を採っているから)。市場が30%小さくなるということは、売り場面積もおよそ30%減ると考えられるので、おおよそ2,000~2,200億円分の本が、各出版社に返品されて戻ってくるのである。すると、とたんに経営が苦しくなる出版社が増え、中には倒産となるケースも出てくる。

 このような事は、当然、出版社も自覚している。そろそろ、電子書籍化に関してはマジメに考えていかなければならない時期になっている。


関連サイト
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/mobile/20100820_388236.html

2010年10月3日日曜日

【コラム】アイパッド向け電子書籍アプリ比較

【ウォール・ストリート・ジャーナル】アイパッド向け電子書籍アプリ比較

米アップルの多機能端末「iPad(アイパッド)」の発売からわずか5カ月だが、アイパッドは既に大ヒットしている。販売台数は数百万台に達し、専用のアプリケーション(アプリ)の数は数万にも及んでいる。

 アイパッドの所有者の多くは、電子メールやソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)の利用、ゲーム、ウェブ閲覧に至るまで、パソコンの代わりにアイパッドを使用するようになっている。アイパッドは、筆者の見解では、非常に優れた電子書籍端末でもある。

 米ネット小売り大手アマゾンの「Kindle(キンドル)」など電子書籍専用の端末とは異なり、アイパッド向けには広範な電子書籍アプリが提供されている。筆者は、実際にそのうちのいくつかを使用して電子書籍をむさぼり読んでいる。特に、ここ数週間は、それらアプリの中でも最も人気のあるものを試用し、それぞれの長所と短所を比較してみた。

 その結果は、どれも甲乙つけがたいといった感じだ。いずれもキンドルなどの既存の電子書籍専用端末と似たような機能を備えており、専用端末とデータのやり取りが可能なものもある。それぞれに長所と短所があり、個人的には用途によって使い分けている。

続きは下記URLで・・・

http://jp.wsj.com/IT/node_104853

iPad登場で「MAGASTORE」に異変――電通が考える電子書籍のジレンマ (1/2)

iPad登場で「MAGASTORE」に異変――電通が考える電子書籍のジレンマ (1/2)

iPadの登場で、電子雑誌配信サービス「MAGASTORE」に異変が起きている。電通 雑誌局の文分邦彦氏が、同社の電子書籍事業の状況や、同氏の考える「電子書籍のジレンマ」を語った。

http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/1006/04/news052.html

漫画用ビューア比較表(PC版)

漫画用ビューア比較表(PC版)

比較対象は下記とおり。
Hamana、CDisplay、Leeyes、ZeeD、cooViewerなど。

続きは下記サイトで・・・
http://www.geocities.jp/comicview7/

GoodReaderとi文庫HDを比較してみた。

GoodReaderとi文庫HDを比較してみた。
(個人による感想)

続きは下記URLで・・・
http://d.hatena.ne.jp/joynote/20100829/1283052913

iPad向け読書ビューアのインターフェイスを比較する

●続々登場するiPad向け読書ビューア
 さまざまな用途に利用できるアップルのタブレット端末「iPad」において、発売当初からとくに注目を集めている使い道といえば、電子書籍の読書端末としての用途だろう。全画面表示であればほぼB5サイズ、横にして見開き表示にすれば単行本サイズの面積が確保できるとあって、ほとんどの本で原寸大に近い表示サイズが維持できる。App StoreのBookカテゴリにアクセスすると、単体のビューアのほか、電子書籍の販売ストアと一体化したビューア、さらにはビューアと電子書籍タイトルが合体したものまで、さまざまなアプリがラインナップされている。


iPad
 しかし、これら電子書籍ビューアの操作方法は千差万別だ。例えば画面の端をタップした際に、ページが次に送られる場合もあれば、逆に1ページ戻る場合もあるなど、本のナビゲーションでもっとも重要と思われるインターフェイスですら挙動は統一されていない。紙の本とは異なる電子書籍ならではのメリットを云々する以前に、肝心の読書に没頭しづらい場合も少なくないのが現状だ。

 そこで今回は、現在App Storeで販売されている主な読書ビューアについて、インターフェイス周りを中心に、前後編に分けて比較を行なってみたい。対象となるのは単体のビューアと、販売ストアと一体化したビューアの2種類で、日本語表示が可能なことを条件に代表的なものをリストアップした。書籍とビューアが一体化したアプリについては数が多いこともあって今回は対象外とした。

 なお、各ビューアで動作する電子書籍タイトルすべてについて挙動を試すのは物理的に不可能であるため、別のタイトルでは挙動が異なる可能性があることを、予めご容赦いただきたい。今回のレビューで試用した具体的な電子書籍タイトルについては、各ビューアおよびアプリの説明中に記した。

●iPad向け読書ビューアに求められる機能を整理する
 比較を行なうにあたり、iPad向けの読書ビューアに求められる機能を、3つに分けて考えることにする。具体的には以下の(A)(B)(C)の3つである。

(A)読書インターフェイス(利用頻度高)
(B)読書補助インターフェイス(利用頻度中)
(C)その他読書に必要となるインターフェイス(利用頻度低)

 まず(A)についてだが、「ページをめくる」という、純粋に読書のための行為を指す。物理的な操作ボタンのないiPadにおいては、画面の端をタップ、もしくはスワイプすることによってページがめくられるわけだが、たったこれだけの操作でありながらビューアごとに挙動が異なるのは、冒頭に述べた通りである。

 ページめくりが左右どちらの手でも行なえることも重要だ。iPadはハードウェア自体にそこそこの重量があり、片手であれ両手であれ長時間ホールドし続けるのは厳しい。それが故、疲れたら反対の手に持ち替えて操作を続ける場合も少なくないと考えられる。従って、めくる/戻るいずれの操作も、左右両方の手で行なえることが望ましい。余談だが、ハードウェアが289gと軽量なKindle2において、めくるボタンが両側にあるのに対し、利用頻度の低い戻るボタンが左側にしかついていないことは、こうした事情と併せて考えると興味深い。

 もう1つ「現在のページ位置を確認できる」ことも、基本的な要件として(A)に加えたい。紙の本を読む際は、本の厚みに対して半分以上を読んだとか、いまが150ページだから残りは約50ページといった具合に、残りのページ数を意識しながら読みすすめる場合が多いからだ。読書中に無意識に行なっているという意味でも、後述の(B)とはやや性質が異なるため、(A)の要件に加えるのが望ましいと考えられる。

 (B)については「しおりを挟む」、「任意のページに直接移動する」など、読書の合間に行なう行為を指す。ページをめくって本を読み進めるという純粋な読書行為とは違うが、本を開いた状態のまま実行する行為、と定義すればよいだろう。電子書籍ならではの「ページの明るさや輝度を変更する」、「文字サイズを変更する」、「メモを書き込む」、「単語を検索する」といった機能もこれに含めたい。

 これらの機能で意識しておかなくてはならないのは、常に表示されていると、かえって読書体験が阻害されかねないこと。せっかくの豊富な補助機能が、読書に集中できない要因になっては本末転倒である。よって、通常は表示オフ、思い立ったらシンプルな操作で呼び出せることが必須条件となる。

 (C)についてだが、具体的には「読んでいる本を閉じて別の本に交換する」という行為を指す。紙の本であれば書庫に足を運んで手持ちの本を書庫に戻し、新たな本を取り出すというアクションだ。前述の(B)と異なるのは、本を完全に閉じた状態で行なう点にある。

 このほか、「縦書き横書きを切り替える」「ルビを表示する」といった日本語特有の機能、さらに「音声で読み上げる」、「外部辞書と連携して語句の検索を行なう」といった付加機能も考えられるが、話が複雑になるので今回は言及しない。複数デバイスで共有する際の台数制限や課金体系といった点も含めて、機会があればまた改めて取り上げたい。

続きは下記サイトで・・・

◆iPad向け読書ビューアのインターフェイスを比較する(前編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/20100729_383964.html

◆iPad向け読書ビューアのインターフェイスを比較する(後編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/20100730_384198.html