全文は下記サイトで・・・
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/mobile/20100413_360754.html
●電子書籍リーダーとしての実力
“電子ブック”や“電子書籍”というとき、多くの人は漠然とあらゆる本の形式を想像しているように思う。しかし、以前にもこの連載で書いたことがあるが、新聞・雑誌・書籍はそれぞれ性格が異なる媒体だ。紙に印刷したメディアであることは同じだが、それ以外の共通点は意外に多くない。
さらにフォーマットについても誤解があるように思う。iPad向けに無償提供されるアップルのiBookはePubという形式を用いて、iBook Storeから書籍を購入、管理する機能を持つ。この夏に利用が可能になるiPhone版のiBookと組み合わせると、自宅のiPadで読んでいる本の続きをiPhoneで読んだりといったことが簡単に行なえるようになる。
しかしiPadがePubに対応した電子ブックリーダーと言うのは間違いで、実際にはさまざまな形式の電子的な本を読むアプリケーションが提供されている。なぜなら(将来はわからないが)現在のePubは特に文学系の書籍や一般的なビジネス書を表現するには十分な使い勝手だが、技術書など少々複雑なレイアウトの本を表現するのが難しいという事情がある。これはオーサリングツールの工夫で解決するだろうが、アニメーションの表現や新聞の紙面のように、その日一日のニュースの傾向を俯瞰するような見方をしたいメディアで利用するのは不向きなのだ。
このためNew York TimesやWall Street Journal、USA Todayなどの新聞社は、独自のアプリケーションを開発して見せ方を工夫している。特にNew York Timesのアプリケーションは秀逸だ。紙面から飛び出してくる動きのある広告などが評判だが、地味ながらもっとも注目されるのが、新聞社で言う“整理部”の仕事がちゃんと反映できるよう作られていることだ。
New York Timesを読んでいるところ こちらはWall Street Journal US Todayのトップ
つまりニュース全体を俯瞰し、世の中全体の流れを紙面構成の中から読者に伝えるような工夫がされている。個々の記事を読む際には、記事をタップして全文を表示する必要があるが、なかなかユニークな工夫だ。文字の複雑な日本の紙面には、もう一工夫が必要かもしれないが、これは単純なWebニュースでは得られない体験と言えるだろう。
一方、アメコミ最大手のMarvel Comicsはコミックを見るためのビューアーを開発して配布。専用アプリの中からコミックを購入することもできる。全体を俯瞰しつつ、コマを順に追っていく読み方もできる。同一ページ内のコマを送る際には、ページ内を目線が動くようにアニメーションするなど、実際にコミックを読んでいる雰囲気をきちんと出していた。
このほかZinioのZinio Readerは、雑誌を見るためのプラットフォーム。雑誌をペラペラとめくりながら、気になったページを読もうとすると、写真や記事を掘り下げて読むことができる。まだ実際に雑誌をパラパラとめくりながら見る体験と同じというところまでは行っていないが、なかなか面白いトライだ。
このように媒体のタイプ、さらには同じ雑誌でも情報誌なのか解説中心の雑誌なのかによっても、最適な見せ方は変わって来るはずだ。それぞれは異なるフォーマットでも、各プラットフォームに読むためのプログラムが用意されていればいい。たとえばKindleだってiPad用アプリケーションがある。
iPadに話を戻してみると、iPadのディスプレイが広視野角なIPSタイプで画素密度も十分に高い点やタッチパネルの軽快な操作性なども良いところだが、上記のような“見せ方”を工夫した閲覧のためのアプリケーションを、比較的構築しやすいように開発環境が整っていることこそが、iPadのこの分野での優位性のようにも思える。
さまざまな電子書籍やコミックを読むためのアプリケーションが用意されている
●“本を読む”ための道具としては辛い面も
これも以前から主張していることだが、上記のように“見せ方の工夫”がしやすいiPadは雑誌的、新聞的な読み方をサポートしてくれるが、その一方で純粋に書籍を読むための道具としては、少々使いづらいとも感じる。
筆者は電子書籍リーダーとして、ふだんSony Reader Daily Editionを使っている。特に新書に関しては、そのままスキャンして余分な余白を裁ち落としたPDFを表示させると、ちょうどいい具合のサイズで読めるからだ。それ以外の電子的なデータが存在するものに関しては、ちょうどいいレイアウトになるPDFを“自炊”している。
と、それは少々マニアックな話だが、同じようにiPadで本を読みたいかというと、そうは思わない。やはり実際に読んでみても、バックライトを使った液晶パネルでは、長時間、文字を読み続けるのが辛いと感じるからである。
こればかりは、電子ペーパーと液晶パネルという、ハードウェアの基本的な性格の違いだから、致し方ないところ。加えてコンピュータデバイスとしては軽量な部類のiPadも、本のように読もうと思うとさすがに重い。下端を指で挟んで読んでいると、すぐに指が疲れてしまう。
さらにバッテリの問題もある。電子ペーパーを使ったリーダーは、どれも1週間ぐらいは鞄の中に入れっぱなしで充電せずに使うことができるが、iPadはそうはいかない。使い方のスタイル次第だろうが、やはり書籍を持ち歩くイメージじゃないなぁというのが、個人的な“感想”である。さて、皆さんはどう感じるだろうか?
もっとも、iPadが電子書籍のビジネスが本格化するきっかけにはなるかもしれない。出版社は保守的だと外からは見えるだろうが、変わらなければならない意識はどの出版社も持っている。なにかトリガーとなるものがあれば、一気に状況は変化するものだ。
最終的にはiPadでも、Kindleでも、Sony Readerでも、一度購入した書籍が携帯電話なども含め、そのとき、その場に適したデバイスで読める環境ができれば、デバイスが何かなどは“どっちでもいい”ことだ。
そしてそのために必要な仕組み作りは、背後で少しずつ進んでいる。それに関してはまた別の機会に記事にしたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿